2025/12/2
一時的にスッキリした感じがする…その“落とし穴”。
日本は“マッサージ天国”だけれど…。
日本は、世界でも珍しいくらいリラクゼーションやマッサージのお店が多い国です。
今や街角には「もみほぐし」「リラクゼーションサロン」「整体」といった看板が並び、
疲れたらとりあえずマッサージ、というのが一つの文化になっています。
しかし、私は臨床経験を通して気になっていることがあります。
それは、「マッサージに頻繁に行く人ほど、体の“形”が悪い」ということ。
ここでいう“形”とは、骨格と筋肉・筋膜の位置関係のことです。
この位置関係が崩れると、慢性的なコリ、循環不良、姿勢の歪みにつながります。
そして多くの方が、その場しのぎのマッサージによって、逆にバランスを崩しているのです。
リラクゼーションマッサージの歴史は意外と浅く、日本で一般化したのはここ15~20年ほど。
そのため、
「その刺激を受けると体がどう反応するのか」、
「自分の体質に合っているかどうか」、
「強い刺激のリスク」についての教育がほとんどありません。
結果として、“気持ちいいから”という理由だけで、体を壊す刺激を受け続ける人がとても多いのです。
日本が“マッサージ天国”になるまでの流れ
● 第1波:2000年代前半(約20年前)
- 台湾式足つぼがテレビで特集される
- アジア式マッサージが日常に広がる
- 繁華街に「足つぼ・アジアン系」店舗が増える
→ ここが“リラクゼーション文化”の入り口。
● 第2波:2007〜2010年(約15〜18年前)
- 「ほぐし」「もみほぐし」「リラクゼーションサロン」と名乗る店が急増
- 60分2980円系の低価格チェーンが全国に広がる
- 「整体」と「リラク」が混在し始め、業態の境界が一気に曖昧に
→ 今の路面型リラクの“原型”が出そろう。
● 第3波:2010〜2015年(約10〜15年前)
- 駅前・路面・マンションサロンなどあらゆる場所で爆発的に増える
- 手技スクール乱立
- 業界未経験でも簡単に参入できるようになり、店舗数が激増
→ ここで街の風景が「リラクで埋まった」時期。
このように、リラクゼーション産業が急に広がったのは、ここ十数年の出来事です。
それに対して、「その刺激が体にどういう影響を与えるのか」という知識は、まだ追いついていません。
そのギャップの結果として今、強い刺激のあとに揉み返しで長く苦しむ方が、実際にとても増えていると感じています。
揉み返しの正体:体が「危険」と判断したあとの炎症
強いマッサージを受けると、筋肉や筋膜(筋肉を包む薄い膜)が押しつぶされ、
微細な損傷が起こります。体はそれを“ケガ”と判断し、炎症反応を起こします。
- だるさ
- 鈍い痛み
- 重さ・こわばり
- ひどい場合は熱感や腫れ
つまり、揉み返しは“効いた証拠”ではなく、組織が傷ついたサインです。
なのに、なぜ「帰り道は体が軽い」のか?
多くの方がこうおっしゃいます。
「その場ではとても軽くなる。帰り道もスッキリしている。」
ここが最大の落とし穴です。
その“軽さ”は、体が防御反応として分泌したアドレナリンの作用であることが多いのです。
- アドレナリンで血流が一時的に上がる
- エンドルフィンで痛覚が鈍くなる
- 少しハイになって「軽い」と錯覚する
つまり、施術直後の軽さ=治ったのではなく“興奮と麻痺”なのです。
時間が経ち興奮が落ち着くと、組織の損傷が「揉み返し」として出てきます。
マッサージ通いで体が壊れるループ
- 強い刺激を受ける
- アドレナリンで一時的に軽く感じる
- 数時間後〜翌日に痛みやだるさ(炎症)が出る
- また“ほぐしてもらわないと”と感じて通う
- さらに強い刺激でないと満足できなくなる
- 筋膜や経絡の流れがどんどん硬く・詰まる
こうして、通うほど体が壊れていくという矛盾が生まれます。
東洋医学の視点:正気が乱れ、経絡が閉じる
東洋医学では、体のエネルギーを正気と呼びます。
強い刺激はこの正気を乱し、陽気(興奮)を一気に上げます。
その後、陽気が落ちるときに、
気血の滞り・巡りの悪化(経絡の閉鎖)が起こります。
表面は“揉まれている”けれど、内側では流れが止まっている状態です。
まとめ:知識があれば体はもっと守れる
日本はケアの選択肢に恵まれている国ですが、
「受ける側が体の仕組みを知らないまま刺激を選んでしまう」という弱点があります。
揉み返しが出るほどの刺激を、
「効いている証拠」と思い込む必要はありません。
その“軽さ”が
- アドレナリンの“ごまかしの軽さ”
- 本来の巡りが整った“本物の軽さ”
どちらなのかを見極めることが、体を守る第一歩です。
あなたの体はいつも正直にサインを出しています。
その声を聞きなおすお手伝いができれば嬉しく思います。
