2026/1/1
「ツボに入る」マッサージって、
ありそうであまり出会えないと感じています。
みなさんがマッサージに行くときのポイントって何でしょう?
疲れたとき、コッたなぁと感じたとき、どこかに痛みがあるとき…。
私も時間が空いているとつい「近くのマッサージに行こうかなぁ」と思ってしまいます。
でも私の場合、ベッドに横になった瞬間から、
それが「ただ横になって受ける時間」ではなく、
“技術評価の場”になってしまうのです。
マッサージ中につい見てしまうポイント
意識してチェックしているつもりはないのですが、
気づくと、こんなところを細かく見ています。
- 触った瞬間の触診力(どこまで情報を取れているか)
- 圧の入り方(浅い・深い・一点なのか面なのか)
- 押す角度(関節の向きや筋走行に合っているか)
- 筋膜の読み方(癒着や滑走の悪さを捉えているか)
- 手のセンス(手の温度・柔らかさ・滑り方の質)
「あ、いまの圧の入れ方だと、ここはほどけないな…」
「イタタタ、こんなに痛くして大丈夫かな…」
「場所合ってないよぉ…ザンネン」
…そんなふうに、頭の中で勝手にコメントが流れてしまいます。
これは、完全に私だけのクセだと思います。
仕事柄、長年「触る側」をやってきた結果の、職業病のようなものです。
リラックスしようとしても、
心と身体のどこかが、どうしても「観察モード」「採点モード」になる。
数十年こんなことをしていますが、「これはツボに入ってるなぁ」と感じた手に出会えたのは、
正直、ほんの数回です。
ツボをとらえる方法は、「強く押す」だけでは届かないので、実はちゃんとコツがあるのです。
そのコツをイメージしやすくするために、ここからはみかん一個を使ってお話ししてみます。
みかん一個でわかる「ツボの深さ」とゴッドハンドの押し方
「ツボ」と聞くと、皮膚の表面からグッと押せば、そのまま届くと思っている方も多いかもしれません。
でも実際には、皮膚のすぐ下には、からだを守るための「分厚いガード」のような層があって、
強く押しているつもりでも、そのガードのところで止まってしまい、ツボの層までは届いていないことがよくあります。
そして、この「ガードの層だけに強い圧をかけ続けてしまう」ことが、
いわゆるもみ返しの大きな原因のひとつです。
ツボや筋膜のラインに届く前に、表面の組織だけがダメージを受けてしまうんですね。
この「ガード」と「ツボの深さ」の違いをイメージしやすくするために、
ここではみかんを使って、ツボの位置を説明してみます。
皮のすぐ内側にある黒い点が「ツボ」のイメージ。
それより深く押し込むと「押しすぎ・もみ返しゾーン」になります。
ツボは、皮膚の表面ではなく「皮を一枚スライスしたくらいの深さ」にあります。
みかんでイメージすると、オレンジ色の皮が私たちの皮膚。
そのすぐ内側、白いワタの中ほどにある黒い点が、
ツボのある層です。
表面だけをなでていても、この層までは届きません。
かといって、みかんをギュッとつぶすくらい強く押すと、ツボを通り越して
「押しすぎ・もみ返しゾーン」に入ってしまいます。
本当に上手な「ゴッドハンド」は、まず
上の皮(表面のガード)をふわっとゆるめてどかし、
そのあとでツボの深さだけスッと沈めて止める押し方をします。
同じ「強さ」で押しているように見えても、
皮の部分で止まっているのか、ツボの層にピタッと届いているのかで、
からだが受け取る刺激はまったく違います。
当院の施術では、みかんでいう「分厚い皮」の層をイメージしながら、
その奥のツボや経絡の層まで届くように鍼灸施術を行います。
上手い人のマッサージと、ルート治療は似ている
これはあくまでからだ観察が好きな私の視座なのですが、
私のからだが「上手いなぁ」と感じるマッサージと、
私が行っているルート治療には、どこか通じるものを感じています。
東洋医学では、経絡のはたらきがあらわれるのは、
皮膚のごく表面だけでも、骨のすぐそばの深いところだけでもなく、
皮膚のすぐ下から筋肉とのあいだにある層だと考えます。
みかんでいえば、ちょうど分厚い皮のあたりのイメージです。
私のからだが「上手い」と感じるマッサージは、
表面だけをこするのでも、奥をグイグイ押すのでもなく、
この中間の分厚い層に、ふわっと入り込んでくる感覚があります。
経絡が通り、邪気がたまりやすいその層そのものに、そっと働きかけてくれる感じです。
ルート治療も同じで、症状が出ているところだけをちょこっと触るのではなく、
経絡や筋膜のルートに沿って、皮膚のすぐ下〜筋肉とのあいだの層に細かく鍼を打っていくことで、
分厚く固まった層にたまった邪気ごと、少しずつ動かしていく治療だと感じています。
治療の根幹は、痛みを消すことではなく、痛みの出ないからだに戻すこと。
多くの人が意識していない「みかんの皮の硬さ」にアプローチするという点で、
ルート治療と、私のからだが「うまいなぁ」と感じるマッサージは、狙う層が同じかなぁと思えます。
そんなふうに感じてしまうのは、私がちょっとしたからだオタクだからかもしれません。
分厚い皮=東洋医学でいう「肌肉」と、邪気・経絡の流れ
みかんの例でいう「分厚い皮」は、からだの世界では、
東洋医学でいう「肌肉(きにく)」という層のイメージに近いところです。
肌肉は、皮膚のすぐ下から筋肉とのあいだにある、
ふかふかしたクッションのような層。
気や血・水分がめぐり、からだをふんわり守ってくれている場所です。
ここに冷えやストレス、使いすぎ・使わなさすぎ、食事や睡眠の乱れなどが重なると、
本来なら流れていってほしいものが、同じところにとどまりやすくなります。
東洋医学では、こうした「動けなくなったよごれ」のようなものを、邪気としてとらえます。
経絡は、本来その人の中をめぐる気と血の「道」。
肌肉の層に邪気がたまってくると、その道が途中で細くなったり、せき止められたりして、
肩こり・腰痛・頭痛・だるさなど、いろいろな不調として現れてきます。
ルート治療で行っているのは、
この肌肉の層(分厚い皮のところ)にたまった邪気に対して、コリのルートに沿って少しずつ風穴をあけていくようなイメージです。
表面だけを強く押してなだめるのではなく、
鍼を細かく打ち分けながら、ガチガチに固まった肌肉の層そのものが、ゆるんで動ける層に戻っていくように
からだに「本来の通り道」を思い出してもらう作業、とも言えます。
邪気が流れやすくなると、経絡の道も通りがよくなり、
「コリが取れる」「軽くなる」といった変化だけでなく、
呼吸の入り方や眠りの質、気持ちのゆとりなど、からだ全体の“ベースの状態”も少しずつ変わっていきます。
今年も、そんなからだオタク目線で、からだリテラシーのお話を少しずつ書いていこうと思います。
一緒に、ご自分のからだのことを深く知っていく一年になったらうれしいです。